
実はなにかとめんどくさいのが二色印刷。
特色使っての二色印刷用のデータ作りって面倒だったりします。
CMYKカラーのうちCMのみを使ってデータ作り、校正の際には「脳内色変換でお願いします」と無理言ってみたり…。
スウォッチオプションの「グローバル」を使いこなして、オブジェクトは特色だけど、写真はCMそのままの色だったりったり…。
何かと面倒なんですが、DTP WORLDで紹介されてた方法をご紹介します。ものすごくいい方法なのに、それ以降見かけなくなってて、あまりにももったいないのでちょっとご紹介します。
引用元
掲載誌 ワークスコーポレーション刊『DTPWORLD』2003年1月号
記事名 第一特集「2色印刷デザイン&テクニック/テクニックPart-2」
/スーパーバイザー:佐々木剛 文・作例:吉田えじ
簡単に流れを紹介すると、プロファイルを作っちゃうんです。PhotoshopはCMYKそれぞれのインクの色をいじることができるんですが、そのうちのCとMの色をカスタマイズしてしまうんです。んで、カラー設定のカスタムとして登録すれば、PhotoshopでもIllustratorでも使えるようになります。
この方法のメリットとして、
○Photoshop、Illustratorのどちらでもカラープレビューしながら編集作業を行える。
○データの作成はCとMで行えるため、色の掛け合わせも再現される(写真もOK)。
○プロファイルを作成し直せば、色の変更が可能(データそのものはいじらなくてOK)。
○PDF作成時にプロファイルを埋め込めば、色を維持したまま校正可能。
○プロファイルを変更しただけなので、出力の際にデータを変更する必要は一切なし。
○カラー設定として保存するため、別のデータでもすぐに適用可能(使い回しOK)。
逆にデメリットとしては、
●まだまだユーザ数の多いIllustrator8では行えない。
こんな感じになるってのを見ていただきましょう。
サンプルとしてIllustrator上にオブジェクト、写真を配置したものを用意しました。

↑CとMで作ったデータ。

↑上のデータに作成したプロファイルを適用したもの。
と、こんな感じに変化します。この状態を保ったまま作業できるし、プリントアウト、PDFも作れます。2色用データも慣れてくると脳内変換可能になってきますが、やっぱり仕上がりの色で作業できると快適です。
例として青と緑の二色印刷を行うとしします。
シアン版を青、マゼンタ版を緑で印刷するとして、シアンを青、マゼンタが緑になるようカラー設定を行っていきます。
プロファイルの作成はPhotoshop上で行うので、まずPhotoshopを起動。
次に色を決めます。必要になるのはLab値なんだけど、色はどんなふうに作ってもいいです。RGBでもCMYKでもDICカラーから選択しても。色が決まったら、カラーパレットのオプション(パレット右上部の右三角マーク)から『Labスライダー』を選択するとLab値に変換してくれますので、ご自由に。
今回の例では以下のような色を指定しました。

↑シアン用変換カラー(L47/a-23/b-53)

↑マゼンタ用変換カラー(L52/a-82/b30)
ここで決めたLab値は後で手入力しますので、メモっといてください。
次に『Phothosop』→『カラー設定...』を選択。

出てきたウインドウの「CMYK」の項目を『カスタム CMYK...』に変更。

さらに出てきたウインドウの「インキの色特性」を『カスタム...』に変更します。

インキの色特性というウインドウが開いたら、『L*a*b*座標値』にチェックを入れてください。

CMYKそれぞれのインクの色はここで調節可能になっていて、メーカー毎に異なるインクの色をシミュレートできるようになってます。適当に数値を変えてみると追随してインクの色が変換されます。シアンを緑にも赤にも変更できちゃいます。つまり、ここで指定したインキ色をもとにCMYK画像を表示してるんです。今回はこの機能を利用して2色印刷のシミュレートを行います。数値の意味はお分かりだとおもいますが、WはWhite。紙の色です。
『L*a*b*座標値』にチェックを入れたら、さきほどメモしておいた数値を入力します。今回の場合
シアン用変換カラー(L47/a-23/b-53)
マゼンタ用変換カラー(L52/a-82/b30)
でしたので、
「C:」の「L*」に47、「a*」に-23、「b*」に-53
「M:」の「L*」に52、「a*」に-82、「b*」に-30
と入力します。数値の右側にあるプレビューの色も変わります。
そして、ここがポイントなんですが、「Y:」の項目には「W:」の値を入力します。上の画面を例に取ると
「W:」の値はL*=93、a*=-0.4、b=*1.5
となっていますので、
「Y:」の「L*」に93、「a*」に-0.4、「b*」に1.5
と同じ数値を入力します。
入力する項目は以上です。Kや他の色はそのままで結構です。入力したら「オーバープリントカラーの予測」にチェックを入れます。

すると入力したCMYの値にしたがって、掛け合わせたときの色(MYやCMなどの項目)が変更されます。後は「OK」ボタンをクリックでウインドウを閉じちゃいます。
カスタムCMYKのウインドウに戻ったら、適当な名前を付けて「OK」ボタンをクリックします。

で、ここでちょっと注意事項なんですが、ウインドウ右下のトーンカーブがめちゃめちゃになってます。これはこれでこのやり方においては正常なんですが、RGB→CMYK変換の際には注意です。ここで作ったカラー設定のままCMYK変換するとトーンジャンプしまくりの画像に変換されちゃいます。RGB→CMYK変換はセオリー通り、通常使用しているカラー設定で「墨版生成:なし」に変更したもので変換した方がいいです。あくまで今回作るカラー設定は色味のプレビュー用途ということで。
カラー設定のウインドウに戻ったら、先ほど付けた名前が「CMYK:」の所に表示されます。

上の画面、設定のところが「カスタム」になっています。これだとIllustratorで選択できないので、この設定に名前を付けて保存します。カラー設定ウインドウの「保存」ボタンをクリック。名前は何でもいいんですが、ここで付けた名前がIllustratorで選択するときに表示される名前になります。

保存場所はデフォルトで、
~/Library/Aplication Support/Adobe/Color/Setting
です。
保存の際に「説明」を入力するように求められます。複数作成するときにはここに詳細情報を残しておくと後で分かりやすいです。特に必要なければ入力しなくてもかまいません。「ピヨってる2色:2色印刷用カラー設定 C版→青 M版→緑」と入力してみました。
カラーマネージメントポリシーの項目はデフォルトのままにしてますが、変更することも可能です。「プロファイルの不一致」や「埋め込みプロファイルなし」のチェックを全て外しておけばうっとうしいダイアログも出なくなります。
保存が終わると今まで設定してきた項目が表示されます。さっき入力した説明も表示されてます。

これで設定完了! お疲れ様!
※選択したLab値によっては、色の表示がちゃんとできなかったりすることが稀にあります。そのときはLab値をちょっと変えてやると、ちゃんと色再現されるようになります。どの数値が失敗するという原因が分からないので、試行錯誤するしかないとしか言えないんですが…。さてさて、Illustratorを起動して、『編集』→『カラー設定』を選択。Photoshopで作成したカラー設定が表示されてます。それを選択すれば、Illustrator上でも2色シミュレートが可能になります。

↓カラー設定適用前のカラーパレット

↓カラー設定適用前のサンプル

↓カラー設定適用後のカラーパレット

カラーバーの色が変わってるのが分かると思います。
↓カラー設定適用後のサンプル

グラデーション、写真、それから色の重ね合わせもちゃんと再現されてます。
Photoshop上でのカラー設定作成がちょっと面倒な感じしますが、慣れればすぐ出来るようになりますし、IllustratorやInDesignではその設定を選択するだけと簡単便利。そしてこのカラー設定を適用しているファイルからPDFを書き出せば、その色味を保ったままPDF化できます。PDFで校正するときには便利です。

↑一例としてIllustratorの『保存』でPDF保存をする際に表示される設定ウインドウ。「詳細」で「ICCプロファイルを埋め込む」にチェックをいれておくだけ。
できたファイルをAcrobatで表示すると

ちゃんと2色プレビューできます。
※プリントアウトの際のトラブル事例を1つ。
2色用にカスタマイズしたカラー設定で表示させているとき、出力先のプリンターによっては見た目通りにプリントアウトされないことがあります。
インクジェットは基本的に問題ないです。
問題が生じる可能性があるのがポストスクリプトプリンタ。FUJI XEROXのDocuPrint CG835を使用してましたが、グラデーション部分がうまく再現されず、元のシアン、マゼンタカラーで出力されました。写真、文字なんかは大丈夫なのにグラデーション部分だけ違ってて、すごく間抜けです。原因は不明です。
ただ、CG835は二色印刷シミュレーション機能を搭載してまして、CMYKどの色にも特色割り当てが可能で、その仕上がりをシミュレートしてプリントしてくれます(高いだけのことはあるです)。その機能をつかうとバッチシ再現されました。
ということで、プリントアウトはインクジェット(っていうかRIPを通さない…っていうか非ポストスクリプトプリンタ)がオススメです。Illustratorからでも、プロファイルを適用したPDFファイルからでも、色を保ったまま出力されました。